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文字の再現性

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印章の技術を覚えるやり方としては、まず、手本となる文字をまねること、つまりは再現性を追求することから始まります。ひたすら本数を重ねることで、印章の技法や意味合いを掴み、理解を深められるんです。筆の流れとしての力の入れ方、例えばこっちの線が膨らんだら、バランスをとるために逆側がふくらまないようにすべき、など、文字ごとに自分の中でわかってくることがあります。この技術を高めるには、私自身の経験も含めてですが、手本となる作品や文字をたくさん見たり、彫り続けることで経験を積むしかありません。

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文字を正しく再現する技術、知識を身につけてこそ、初めてその先にあるオリジナリティをまとった文字を構築することができます。逆に、再現性という基本をクリアしていない人がオリジナルの書風を表現しようとすると、文字の成り立ちや構造を無視してしまう場合が多く、まるでとんちんかんな印章もどきができあがってしまうんです。一つひとつの文字についてしっかり把握していなければ、当然そうなってしまうでしょうし、しかも本人は間違えていることすら気づけない。印章のつくり手として、それではいけませんね。この世で唯一無二の、その人を表す分身である印章をつくるためには、文字を正しく理解してきちんと再現できる人間が、オリジナリティを加味し、初めて完成に辿り着くもの。文字の再現性が大切なのは、そういう印章の根幹に関わる重要性が潜んでいるためです。

ただ、手彫りの技術がない人でも、文字の再現そのものはできます。文字の手本をスキャナで読み取り、その通りに機械でつくれるからです。正直、高い技術を持つ職人が手彫りでつくったものと、機械で完成させたものを比較した時、一般の方では違いはわからないでしょうね。なら、簡単な分、機械化に頼ればいい、とは決して思いません。何よりも、手彫りで仕上げた印章には、強い思い入れが宿っています。画一的な機械作業では絶対に表現できない「手彫りならではの良さ」がにじみ出てくるからです。

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機械彫りの多い状況の中、敢えて手彫りの品をご注文くださるお客様が何を求めているのか? そこには「“ぬくもり”や“想い”をこめて大切な印章をつくってほしい」という要望があるからだと、私たちは考えます。熟練のプロがつくる手彫りの印章には、機械ではどうやっても表現することができない人の手ならではの“味”があふれているのです。意図的に化粧彫りを施さず波打った状態を残すなど、ちょっとした部分に手彫りらしさを盛りこむことをオーダーされることが増えてきたのも、皆様の需要の表れなのだと思います。

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